2006.10.02 Mon
ズズズズズズ・・・・
ブブブブ・・・・・
どこからともなく怪しい音が聞こえてきたのは
夏の始まった7月初旬のことだった。
最初にその音を聞いたのは、泊まり客のせきねさんだった。
「あの〜、昨日の夜、何か変な音がしたんですけど・・・」
「えっ、音ですか?別に昨日は何もなかったし・・・」
朝の食事を持ってきた仲居のうっ子は不思議そうに答えた。
「そんなに大きな音じゃなかったんですけど、ものすごく変わった音で・・・。ちょっと恐かった」
「そうですか。どうもすみません。ちょっと聞いてみますね」
「なんかね、にんじんの間のお客さんが昨日変な音聞いたんだって。
マゼさん、聞こえた?」
「いや、全然。あっ、若旦那、ちょっと」
「どうしたんだい」
「るる太さん、昨日の夜変な音聞こえました?」
「聞いてないよ。何かあったの?」
「お客さんがね・・・・」
その頃、せきねさんはうの屋からほど近い、うさうさ山を散策していた。彼女は普段、キャリアウーマンとして忙しい毎日を送っているが、
たまの休みになると、こうして1人旅をするのが常だった。
そのお目当てはおいしい料理。うの屋を訪れたのは、
グルメ雑誌「一度は訪れたい 牧草の宿」を見たからだ。
料理長・マゼの作った評判通りの料理を食べ、満足した彼女が床に入ったのは午前零時を過ぎていた。
うとうとしはじめた頃、ズズズズズ・・・ブブブブブブ・・・
あの異様な音が聞こえてきたのだった。
「最近忙しかったし、気のせいかな」
そう思い直し、朝食の後、散策を楽しんでいた彼女の耳に
ヒッズズズズ・・・・ブブブブ・・・
またあの音が聞こえてきた。
「キャー」
せきねさんは駆けだしていた。
「もう、こんなところ嫌!帰ります!」
「お客さん、そんな・・・」
「聞き違いじゃ・・・」
「私がおかしいとでもいうの!」
「ちょっと、るる太さん、失礼ですよ、そんなこと。すみません、お客さん」
気味が悪いのでもう帰るという、せきねさんを
うっ子、マゼ、るる太は止めていた。
「あら、どうしたの」
ちょうどそこへらら美がやってきた。
「あっ、女将さん実はですね・・・」
「あら、そうでしたの。それはすみませんね。その音私だわ、きっと」
「えーっ!!」
「いえね、何だか最近、いびきというかすごいらしいのよ、寝ている時。ほら、組合の旅行があったでしょう、この前。その時ね、一緒の部屋のうささんに言われたのよ。すごいわね、って」
「でも、僕、全然聞いたことないよ」
「私も」
「僕もです」
「だって、恥ずかしいじゃない。だからみんながぐっすり眠るまで、
頑張って起きていたのよ。でも、昨日は疲れてて11時前にはぐっすり。おまけに朝食を食べた後も眠くって、野草を採りにうさうさ山に行ったら、また眠っちゃったわ」
「それでお客さんどうしたの」
私、ミミ山は例によってうっ子の話を聞いていた。
「まあ、それで一件落着したんで、最初の予約通り、次の日に
お帰りになられましたわ。もちろん、お詫びとして、その日の夕食はかなり豪華なものをお出ししましたけど」
今や1年のうち3分の2以上をうの屋で過ごす私が、
こんな時に限っていなかったとは・・・。
それにしても、らら美女将のいびき、聞いてみたいものだ。
今回のゲスト:せきねさん「関根との日々」
ブブブブ・・・・・
どこからともなく怪しい音が聞こえてきたのは
夏の始まった7月初旬のことだった。
最初にその音を聞いたのは、泊まり客のせきねさんだった。
「あの〜、昨日の夜、何か変な音がしたんですけど・・・」
「えっ、音ですか?別に昨日は何もなかったし・・・」
朝の食事を持ってきた仲居のうっ子は不思議そうに答えた。
「そんなに大きな音じゃなかったんですけど、ものすごく変わった音で・・・。ちょっと恐かった」
「そうですか。どうもすみません。ちょっと聞いてみますね」
「なんかね、にんじんの間のお客さんが昨日変な音聞いたんだって。
マゼさん、聞こえた?」
「いや、全然。あっ、若旦那、ちょっと」
「どうしたんだい」
「るる太さん、昨日の夜変な音聞こえました?」
「聞いてないよ。何かあったの?」
「お客さんがね・・・・」
その頃、せきねさんはうの屋からほど近い、うさうさ山を散策していた。彼女は普段、キャリアウーマンとして忙しい毎日を送っているが、
たまの休みになると、こうして1人旅をするのが常だった。
そのお目当てはおいしい料理。うの屋を訪れたのは、
グルメ雑誌「一度は訪れたい 牧草の宿」を見たからだ。
料理長・マゼの作った評判通りの料理を食べ、満足した彼女が床に入ったのは午前零時を過ぎていた。
うとうとしはじめた頃、ズズズズズ・・・ブブブブブブ・・・
あの異様な音が聞こえてきたのだった。
「最近忙しかったし、気のせいかな」
そう思い直し、朝食の後、散策を楽しんでいた彼女の耳に
ヒッズズズズ・・・・ブブブブ・・・
またあの音が聞こえてきた。
「キャー」
せきねさんは駆けだしていた。
「もう、こんなところ嫌!帰ります!」
「お客さん、そんな・・・」
「聞き違いじゃ・・・」
「私がおかしいとでもいうの!」
「ちょっと、るる太さん、失礼ですよ、そんなこと。すみません、お客さん」
気味が悪いのでもう帰るという、せきねさんを
うっ子、マゼ、るる太は止めていた。
「あら、どうしたの」
ちょうどそこへらら美がやってきた。
「あっ、女将さん実はですね・・・」
「あら、そうでしたの。それはすみませんね。その音私だわ、きっと」
「えーっ!!」
「いえね、何だか最近、いびきというかすごいらしいのよ、寝ている時。ほら、組合の旅行があったでしょう、この前。その時ね、一緒の部屋のうささんに言われたのよ。すごいわね、って」
「でも、僕、全然聞いたことないよ」
「私も」
「僕もです」
「だって、恥ずかしいじゃない。だからみんながぐっすり眠るまで、
頑張って起きていたのよ。でも、昨日は疲れてて11時前にはぐっすり。おまけに朝食を食べた後も眠くって、野草を採りにうさうさ山に行ったら、また眠っちゃったわ」
「それでお客さんどうしたの」
私、ミミ山は例によってうっ子の話を聞いていた。
「まあ、それで一件落着したんで、最初の予約通り、次の日に
お帰りになられましたわ。もちろん、お詫びとして、その日の夕食はかなり豪華なものをお出ししましたけど」
今や1年のうち3分の2以上をうの屋で過ごす私が、
こんな時に限っていなかったとは・・・。
それにしても、らら美女将のいびき、聞いてみたいものだ。
今回のゲスト:せきねさん「関根との日々」
2006.08.04 Fri
「さあ、皆さん、今日も笑顔で元気よく!」
「朝っぱらから元気ね〜、店長」
「しっ、聞こえますよ、らら美さん」
「あら、いいじゃない。別に」
「・・・ということになりましたので、皆さんよろしくお願いします」
「えっ!らら美さん、店長何ていったんですか?」
「私が聞いてるわけないじゃない」
「うっ子ちゃん、来月から始まる1周年記念のアイデアを募集するんだってさ」
「あー、そうなんですか。だったら、私関係ないわ。あっ、ありがとうございました、るる太さん・・・」
うっ子が礼を言っている間にすでにるる太の姿は消えていた。
「あら〜今日のダイコン葉みずみずしいわね。おいしそう〜」
「そうでしょう。寿々さん。こんないいい葉っぱなかなか手に入れにくいんですよ。でもさすがね。お目が高いわ」
「あら、そんなこと・・・。でも、私、お野菜にはかなりうるさくてよ」
「いつもありがとうございます」
「あら、マゼ店長。今日はどうしたの。スーツなんか着て」
「いえ、午後から出張なんですよ。」
「そうなの。大変ね〜。じゃあ〜」
「いつ見ても美しくてお上品なうさですね。寿々さんって」
「あら私も、昔はあーだったのよ」
「えー!!らら美さんが」
「そうよ。でも今じゃ毎日毎日子育てに、ここのパートでしょう。もう大変なんだから」
と、らら美がグチをこぼしている時、
「すみません。冷え冷えマットはどこですか?」と尋ねる声。
「あら、のえちゃんにあんちゃん」
「あっ、うっ子ちゃん。もう、どんどん暑くなってきてたまんないよ。ママに言ったら、すぐ買ってこいってさ」
「いいわね〜。2うさとも。優しいママで」
「うん。でも、あんまりいたずらが過ぎると怒られちゃうけどね。」
「当たり前よ。でも、それもあなたたちがかわいいからよ」
「僕たちのマットだけど、ママが暑そうにしていたら、貸してあげるんだ」
「まあ、なんていい子達。感動しちゃったわ。ほら、店長が見てないから、50%引きよ」
「そ、そんな・・・らら美さん。いいんですか」
「いいことないに決まってるじゃないの。だから、こっそりよ」
「えーでも・・」
「もう、何ぐずぐずしてんのよ。早く」
「いつもごひいきにいていただいて・・」
「あっ店長!」
「ありがとうございました。またどうぞ」
「あ、ありがとう」
あんちゃんのえちゃんは帰っていった。
「すみません。キャベツはどこですか?」
「キャベツなら、一番左のところです」
しばらくすると、キャベツをかごいっぱいに入れた
男がレジにやってきた。
「お客さん。そんなにキャベツが好きなんですか?あんまり食べるとお腹を壊しちゃいますよ」
「あははは・・いえ僕が食べるんじゃありませんよ。友達に頼まれてね」
「?」
「僕、今、月に住んでるんです。そこで知り合った僕と同じ名前のうー太郎っていうのがお好み焼屋をしてるんですよ。で、たまたま僕が地球へ行くっていったら、キャベツを買ってきてくれっていわれて・・・」
「あっ、うーたろうさん!お久しぶりです」
「るる太くん!なんだ、ここで働いてたの」
「ええ、ここ店はちっちゃいけど、旅館とか喫茶チェーンとか多角経営なんです」
「あら、多角経営なんて言葉よく知ってたわね。珍しい」
「らら美さんったら。ねえ、るる太さん」
「ところで、そのお好み焼き屋さん、おいしいの」
「なんせ、本場・大阪うさぎが焼いてますからね」
「あら、食べてみたいわ〜」
「僕も」
「私もちょっとだけでいいので・・・」
「あら、店長いつからいたの?ちっちゃくて見えなかったわ」
「それは、うっ子ちゃんの大きなからだの影に隠れてたからね」
「もう、店長ったら。訴えますよ。ブーブー」
「ほら、レディが鼻を鳴らさない」
「でも、ここの野菜みずみずしいですね。今度母に教えてあげよう」
「それはそれは。どうも」
「ところで、うーたろうさんはお好み焼きって作れるの?」
「いえ、まだ修行中の身で・・・おいしいのが焼けるようになったら、おかーしゃん、あっ、母にプレゼントしようと思ってるんです」
「まあ、なんて親孝行なんでしょう。もうキャベツはタダよ!」
「ち・ちょっと、店長もいるのよ」
「いやあ、キャベツと言わず他の物も持ってってください」
「店長!!」
こんなうさばかりなので、スーパー・うの屋は赤字経営からの脱却ができないのであった。
「朝っぱらから元気ね〜、店長」
「しっ、聞こえますよ、らら美さん」
「あら、いいじゃない。別に」
「・・・ということになりましたので、皆さんよろしくお願いします」
「えっ!らら美さん、店長何ていったんですか?」
「私が聞いてるわけないじゃない」
「うっ子ちゃん、来月から始まる1周年記念のアイデアを募集するんだってさ」
「あー、そうなんですか。だったら、私関係ないわ。あっ、ありがとうございました、るる太さん・・・」
うっ子が礼を言っている間にすでにるる太の姿は消えていた。
「あら〜今日のダイコン葉みずみずしいわね。おいしそう〜」
「そうでしょう。寿々さん。こんないいい葉っぱなかなか手に入れにくいんですよ。でもさすがね。お目が高いわ」
「あら、そんなこと・・・。でも、私、お野菜にはかなりうるさくてよ」
「いつもありがとうございます」
「あら、マゼ店長。今日はどうしたの。スーツなんか着て」
「いえ、午後から出張なんですよ。」
「そうなの。大変ね〜。じゃあ〜」
「いつ見ても美しくてお上品なうさですね。寿々さんって」
「あら私も、昔はあーだったのよ」
「えー!!らら美さんが」
「そうよ。でも今じゃ毎日毎日子育てに、ここのパートでしょう。もう大変なんだから」
と、らら美がグチをこぼしている時、
「すみません。冷え冷えマットはどこですか?」と尋ねる声。
「あら、のえちゃんにあんちゃん」
「あっ、うっ子ちゃん。もう、どんどん暑くなってきてたまんないよ。ママに言ったら、すぐ買ってこいってさ」
「いいわね〜。2うさとも。優しいママで」
「うん。でも、あんまりいたずらが過ぎると怒られちゃうけどね。」
「当たり前よ。でも、それもあなたたちがかわいいからよ」
「僕たちのマットだけど、ママが暑そうにしていたら、貸してあげるんだ」
「まあ、なんていい子達。感動しちゃったわ。ほら、店長が見てないから、50%引きよ」
「そ、そんな・・・らら美さん。いいんですか」
「いいことないに決まってるじゃないの。だから、こっそりよ」
「えーでも・・」
「もう、何ぐずぐずしてんのよ。早く」
「いつもごひいきにいていただいて・・」
「あっ店長!」
「ありがとうございました。またどうぞ」
「あ、ありがとう」
あんちゃんのえちゃんは帰っていった。
「すみません。キャベツはどこですか?」
「キャベツなら、一番左のところです」
しばらくすると、キャベツをかごいっぱいに入れた
男がレジにやってきた。
「お客さん。そんなにキャベツが好きなんですか?あんまり食べるとお腹を壊しちゃいますよ」
「あははは・・いえ僕が食べるんじゃありませんよ。友達に頼まれてね」
「?」
「僕、今、月に住んでるんです。そこで知り合った僕と同じ名前のうー太郎っていうのがお好み焼屋をしてるんですよ。で、たまたま僕が地球へ行くっていったら、キャベツを買ってきてくれっていわれて・・・」
「あっ、うーたろうさん!お久しぶりです」
「るる太くん!なんだ、ここで働いてたの」
「ええ、ここ店はちっちゃいけど、旅館とか喫茶チェーンとか多角経営なんです」
「あら、多角経営なんて言葉よく知ってたわね。珍しい」
「らら美さんったら。ねえ、るる太さん」
「ところで、そのお好み焼き屋さん、おいしいの」
「なんせ、本場・大阪うさぎが焼いてますからね」
「あら、食べてみたいわ〜」
「僕も」
「私もちょっとだけでいいので・・・」
「あら、店長いつからいたの?ちっちゃくて見えなかったわ」
「それは、うっ子ちゃんの大きなからだの影に隠れてたからね」
「もう、店長ったら。訴えますよ。ブーブー」
「ほら、レディが鼻を鳴らさない」
「でも、ここの野菜みずみずしいですね。今度母に教えてあげよう」
「それはそれは。どうも」
「ところで、うーたろうさんはお好み焼きって作れるの?」
「いえ、まだ修行中の身で・・・おいしいのが焼けるようになったら、おかーしゃん、あっ、母にプレゼントしようと思ってるんです」
「まあ、なんて親孝行なんでしょう。もうキャベツはタダよ!」
「ち・ちょっと、店長もいるのよ」
「いやあ、キャベツと言わず他の物も持ってってください」
「店長!!」
こんなうさばかりなので、スーパー・うの屋は赤字経営からの脱却ができないのであった。
2006.07.19 Wed
「で、いつから来てもらえます」
「こちらのご都合がよろしければ今日からでも」
「うちは大歓迎ですよ。男手と言えば、ぼんくらの息子と気むずかしい板前だけですからねぇ。じゃあ、早速部屋を用意させますよ。ちょっと、うっ子」
「はーい」(ドテッ)
「また転んで・・・全くあの子はそそっかしいんだから」(ドテッ)
「あっ、女将さん!」
「な、何でもありませんよ。アイタタタ・・・」
私がちょっと仕事でうの屋に来れない間、
ちょっとした出来事があったようだ。
もちろん、私自身、その情景を見てはいないが、
多分、こんなことだろう。
昨日までの雨がうそのような夏のある日、
久しぶりにうの屋に訪れた。
「あっ、お客さん、今そこに水をまいたんで、気をつけてくださいね」
えっ?聞き慣れない上品な言葉使い。
うの屋にはなかったことだ。
「君は?」
「1ヶ月ほど前からお世話になっているこむぎと申します。以後、お見知りおきを」
なかなかの美男子で、物腰は柔らか。
さぞかし女性にもてるだろう。
「そうですか。はじめまして、ミミ山です。まあ、ここは私の第2の家みたいなもんで、しょっちゅうお世話になってます。よろしく」
いつもの部屋でくつろいでいるとらら美女将がやってきた。
「ミミ山さん。今度はちょっと間があきましたね」
「そうなんだ。野暮用が片づかなくてねぇ」
「そうそう、新しいうさが入ったんですよ」
「あー、こむぎさんだろ。さっきあったよ」
「働き者だし、丁寧だし、いいうさなんですけどね・・・」
「なにかあるのかい?」
「いえ、別に・・・そうそう、お風呂が沸いてますから汗をながされたらどうです」
何故か、口ごもる女将が気になるが、根掘り葉掘り聞くのも何か。
「あー、そうさせてもらうよ」
私は風呂場へ歩いていった。
「ちょっと、こむぎさん。起きてよ」
町へ本を買いに行こうと玄関に向かうと、うっ子の声が聞こえてきた。
「みんな、気をつけろ!ムニャムニャ・・・」
「こむぎさんったら」
「えっ、あっ、うっ子ちゃん。朝ですか〜」
「何いってんのよ」
「あっ!すみません」
どうやら新入りさんは眠っていたらしい。
仕事はさほどきつくないはずだが・・・・
「いえね、しょっちゅうなんですよ。ちょっと困ってるんです」
女将の話を聞き、こむぎさんがよくうたた寝をしていることがわかった。
「ミミ山さん、こんにちは」
いきなり、元気のいい声が聞こえた。
「やあ、るる太くん久しぶりだね」
「これ、ちゃんとご挨拶しなさい」
「まあまあ、で、どうしたんだい今日は。珍しいね、私の部屋に来るなんて」
「最近、この町の青年団に入ったんです。さびれた町に活力を与えるためには、なんて毎日話し合っているんです」
「それを大義名分に食べたり飲んだりしているだけじゃないの」
「そんなことないよ。僕たちはちゃんとした会合をしてるんだ。誰かさんみたいに夜中にこっそり出かけたりしてないよ」
「夜中にこっそりって、誰のこと?」
「あっ、何でもないよ」
「るる太、言いなさい。母さんに隠し事は出来ないことわかってるでしょ!」
「わかったよ。こむぎさんが夜中に出て行くの、何度も見てるんだ」
「えーっ」
それが、居眠りの原因か。
真相を確かめると勢いこむ女将をどうにか説き伏せ、
こむぎさんと話をすることにした。
「夜中に出かけるって・・何処へいってるんです。もしや・・・」
「いえ、皆さんが思われるようなことじゃありません」
「じゃあ何処へ?」
「それは・・・」
「はっきり、言ったらどうなんです。隊長」
いつの間にか、そこにはマゼくんが立っていた。
「マゼくん・・・」
「ミミ山さん、この方はオイラとは違って偉い方なんです」
「偉い方?」
「マゼくん、やめてくれ」
「いえ、あなたが言わないんだったら、オイラが言いますよ。ミミ山さん、あなたオレンジ隊ってご存知ですか?」
「あー、噂には聞いたことがあるよ。世のため人のためとかいう・・・」
「そうです。そのオレンジ隊です。こむぎさんはそのオレンジ隊の隊長さんなんです」
「ということは、夜中に出て行ってるのは」
「ええ、活動しているんです」
「でも、隊長としての任務だけでも忙しいだろうに、どうしてうの屋に・・・」
「マゼさんも最近オレンジ隊に入隊されたんですが、マゼさんにここの話を聞いたんです。女将さんが手術を受けられて、また足もよくない。息子のるる太さんはまだ主人の器じゃない。あといるのは若いうっ子さんとマゼさんだけ。僕は放っておけなかったんです」
私は思わずこむぎさんの顔をみつめた。
「本当にありがとうね。私、全然気がつかなくて」
「いえ、女将さん。私の方こそ、お役に立てなくてすみません」
「僕もこむぎさんみたいにかっこよくなりたいから、オレンジ隊に入ろうかな」
「るる太、あんたに務まるわけないでしょ」
「何言ってるんだい、僕は青年団で・・・」
「まあまあ、今日はこむぎさんの旅立ちの日だ。みんな仲良くしようじゃないか」
「隊長、お口に合うかどうかわかりませんが、昼飯にでも・・・」
「こむぎさん、チモシー入りのおむすび作ったの。食べてね」
「こら、うっ子。そんなまずそうなもの、隊長に失礼だぞ!」
「何いってんの。マゼさんの作る料理こそ、見栄えばかりでちっともお腹が一杯にならないってお客さんが言ってたわよ!」
「お客さんじゃないだろう。おまえが大食いだからそう思ってるだけだろう!」
あーこっちでも始まった。
こむぎさんはその光景を笑いながら見ていたが、やがてうの屋の門を
出て行った。
今回のゲスト・こむぎちゃん「おきらくウサギ生活」
「こちらのご都合がよろしければ今日からでも」
「うちは大歓迎ですよ。男手と言えば、ぼんくらの息子と気むずかしい板前だけですからねぇ。じゃあ、早速部屋を用意させますよ。ちょっと、うっ子」
「はーい」(ドテッ)
「また転んで・・・全くあの子はそそっかしいんだから」(ドテッ)
「あっ、女将さん!」
「な、何でもありませんよ。アイタタタ・・・」
私がちょっと仕事でうの屋に来れない間、
ちょっとした出来事があったようだ。
もちろん、私自身、その情景を見てはいないが、
多分、こんなことだろう。
昨日までの雨がうそのような夏のある日、
久しぶりにうの屋に訪れた。
「あっ、お客さん、今そこに水をまいたんで、気をつけてくださいね」
えっ?聞き慣れない上品な言葉使い。
うの屋にはなかったことだ。
「君は?」
「1ヶ月ほど前からお世話になっているこむぎと申します。以後、お見知りおきを」
なかなかの美男子で、物腰は柔らか。
さぞかし女性にもてるだろう。
「そうですか。はじめまして、ミミ山です。まあ、ここは私の第2の家みたいなもんで、しょっちゅうお世話になってます。よろしく」
いつもの部屋でくつろいでいるとらら美女将がやってきた。
「ミミ山さん。今度はちょっと間があきましたね」
「そうなんだ。野暮用が片づかなくてねぇ」
「そうそう、新しいうさが入ったんですよ」
「あー、こむぎさんだろ。さっきあったよ」
「働き者だし、丁寧だし、いいうさなんですけどね・・・」
「なにかあるのかい?」
「いえ、別に・・・そうそう、お風呂が沸いてますから汗をながされたらどうです」
何故か、口ごもる女将が気になるが、根掘り葉掘り聞くのも何か。
「あー、そうさせてもらうよ」
私は風呂場へ歩いていった。
「ちょっと、こむぎさん。起きてよ」
町へ本を買いに行こうと玄関に向かうと、うっ子の声が聞こえてきた。
「みんな、気をつけろ!ムニャムニャ・・・」
「こむぎさんったら」
「えっ、あっ、うっ子ちゃん。朝ですか〜」
「何いってんのよ」
「あっ!すみません」
どうやら新入りさんは眠っていたらしい。
仕事はさほどきつくないはずだが・・・・
「いえね、しょっちゅうなんですよ。ちょっと困ってるんです」
女将の話を聞き、こむぎさんがよくうたた寝をしていることがわかった。
「ミミ山さん、こんにちは」
いきなり、元気のいい声が聞こえた。
「やあ、るる太くん久しぶりだね」
「これ、ちゃんとご挨拶しなさい」
「まあまあ、で、どうしたんだい今日は。珍しいね、私の部屋に来るなんて」
「最近、この町の青年団に入ったんです。さびれた町に活力を与えるためには、なんて毎日話し合っているんです」
「それを大義名分に食べたり飲んだりしているだけじゃないの」
「そんなことないよ。僕たちはちゃんとした会合をしてるんだ。誰かさんみたいに夜中にこっそり出かけたりしてないよ」
「夜中にこっそりって、誰のこと?」
「あっ、何でもないよ」
「るる太、言いなさい。母さんに隠し事は出来ないことわかってるでしょ!」
「わかったよ。こむぎさんが夜中に出て行くの、何度も見てるんだ」
「えーっ」
それが、居眠りの原因か。
真相を確かめると勢いこむ女将をどうにか説き伏せ、
こむぎさんと話をすることにした。
「夜中に出かけるって・・何処へいってるんです。もしや・・・」
「いえ、皆さんが思われるようなことじゃありません」
「じゃあ何処へ?」
「それは・・・」
「はっきり、言ったらどうなんです。隊長」
いつの間にか、そこにはマゼくんが立っていた。
「マゼくん・・・」
「ミミ山さん、この方はオイラとは違って偉い方なんです」
「偉い方?」
「マゼくん、やめてくれ」
「いえ、あなたが言わないんだったら、オイラが言いますよ。ミミ山さん、あなたオレンジ隊ってご存知ですか?」
「あー、噂には聞いたことがあるよ。世のため人のためとかいう・・・」
「そうです。そのオレンジ隊です。こむぎさんはそのオレンジ隊の隊長さんなんです」
「ということは、夜中に出て行ってるのは」
「ええ、活動しているんです」
「でも、隊長としての任務だけでも忙しいだろうに、どうしてうの屋に・・・」
「マゼさんも最近オレンジ隊に入隊されたんですが、マゼさんにここの話を聞いたんです。女将さんが手術を受けられて、また足もよくない。息子のるる太さんはまだ主人の器じゃない。あといるのは若いうっ子さんとマゼさんだけ。僕は放っておけなかったんです」
私は思わずこむぎさんの顔をみつめた。
「本当にありがとうね。私、全然気がつかなくて」
「いえ、女将さん。私の方こそ、お役に立てなくてすみません」
「僕もこむぎさんみたいにかっこよくなりたいから、オレンジ隊に入ろうかな」
「るる太、あんたに務まるわけないでしょ」
「何言ってるんだい、僕は青年団で・・・」
「まあまあ、今日はこむぎさんの旅立ちの日だ。みんな仲良くしようじゃないか」
「隊長、お口に合うかどうかわかりませんが、昼飯にでも・・・」
「こむぎさん、チモシー入りのおむすび作ったの。食べてね」
「こら、うっ子。そんなまずそうなもの、隊長に失礼だぞ!」
「何いってんの。マゼさんの作る料理こそ、見栄えばかりでちっともお腹が一杯にならないってお客さんが言ってたわよ!」
「お客さんじゃないだろう。おまえが大食いだからそう思ってるだけだろう!」
あーこっちでも始まった。
こむぎさんはその光景を笑いながら見ていたが、やがてうの屋の門を
出て行った。
今回のゲスト・こむぎちゃん「おきらくウサギ生活」
2006.07.06 Thu
ブログの途中ですが、今入ったうの屋ニュースを申し上げます。
深夜にひっそりこっそり、ブログを書いているミミラ特派員の横のマットレスの上で目を開け眠っていたらら美女将ですが、
突然、ミミラ特派員の耳に変な音が入ってきました。
ふと、女将の方を見ると、上半身、見方によれば足より上が
マットレスから落ちている女将を発見。
微動だにもしない女将の姿に、ミミラ特派員は恐くなって、
側により揺すったとのことです。
すると、ムクッと起きて、しばし放心状態の女将の姿が見られた、とのことです。
うの屋お抱え医師は、
「女将は睡魔との勝負に負け、かなり深くお眠り状態のだったとき、
あやまってマットレスから転落。それでもなお、深〜く、眠っていた
のでしょう」
と話しています。
ここにまた、らら美女将の伝説が生まれました。
以上、ミミラ特派員からの報告でした。
深夜にひっそりこっそり、ブログを書いているミミラ特派員の横のマットレスの上で目を開け眠っていたらら美女将ですが、
突然、ミミラ特派員の耳に変な音が入ってきました。
ふと、女将の方を見ると、上半身、見方によれば足より上が
マットレスから落ちている女将を発見。
微動だにもしない女将の姿に、ミミラ特派員は恐くなって、
側により揺すったとのことです。
すると、ムクッと起きて、しばし放心状態の女将の姿が見られた、とのことです。
うの屋お抱え医師は、
「女将は睡魔との勝負に負け、かなり深くお眠り状態のだったとき、
あやまってマットレスから転落。それでもなお、深〜く、眠っていた
のでしょう」
と話しています。
ここにまた、らら美女将の伝説が生まれました。
以上、ミミラ特派員からの報告でした。
2006.06.30 Fri
うの屋の朝は早い。
「ちょっと、お客さん起きてくださいよ〜
もう何時だとおもってるんですか!」
女将のすさまじいガジガジ音を遠くに聞きながら、
まだ夢うつつの私。
しかし、それもそう長くは続かなかった。
「ガンガン!お客さん!ドンッ!ちょっとお客さん!バターン」
この騒々しい音は仲居頭のうっ子だ。
仕方なく私はのろのろとふとんから出た。
ここはとある町にある旅館・うの屋。
老舗とは言えないが、先代・うー太郎が残した
建物はそれなりの風格を持っていた。
それは私のすきな佇まいでもあった。
さらにうの屋には私に足を向けさせるものがある。
否、それこそ今、私がうの屋に逗留している理由だ。
若くして未亡兎になった、女将のらら美。
働き者だが失敗も多い仲居頭のうっ子。
兎のいいやつだが、ちょっと気の弱いところもある若旦那るる太。
料理の腕も頑固さも天下一品、料理長マゼ。
彼らの愛すべき兎柄が、私ミミ山を惹きつける。
って感じで「うの屋」シリーズをたまに書こうかな、って思ってます。
まあ、この旅館編は3回ぐらいで、ゲストも登場していただく予定。
ゲスト出演希望という珍しい方(うさ限定でーす)が
いらっしゃったら挙手してくださいね(見えないよ〜)。
女将のらら美。

「ちょっと、お客さん起きてくださいよ〜
もう何時だとおもってるんですか!」
女将のすさまじいガジガジ音を遠くに聞きながら、
まだ夢うつつの私。
しかし、それもそう長くは続かなかった。
「ガンガン!お客さん!ドンッ!ちょっとお客さん!バターン」
この騒々しい音は仲居頭のうっ子だ。
仕方なく私はのろのろとふとんから出た。
ここはとある町にある旅館・うの屋。
老舗とは言えないが、先代・うー太郎が残した
建物はそれなりの風格を持っていた。
それは私のすきな佇まいでもあった。
さらにうの屋には私に足を向けさせるものがある。
否、それこそ今、私がうの屋に逗留している理由だ。
若くして未亡兎になった、女将のらら美。
働き者だが失敗も多い仲居頭のうっ子。
兎のいいやつだが、ちょっと気の弱いところもある若旦那るる太。
料理の腕も頑固さも天下一品、料理長マゼ。
彼らの愛すべき兎柄が、私ミミ山を惹きつける。
って感じで「うの屋」シリーズをたまに書こうかな、って思ってます。
まあ、この旅館編は3回ぐらいで、ゲストも登場していただく予定。
ゲスト出演希望という珍しい方(うさ限定でーす)が
いらっしゃったら挙手してくださいね(見えないよ〜)。
女将のらら美。

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